『窓』

『窓』

なんか文学的なタイトルのような気がしないでもありませんが、『窓』は家という箱からすると単なる〝穴〟でしかありません。
今回は、なぜそうなのか。その『窓』について考えていきます。
1、『窓』は家の〝穴〟?!
日本人って、結構、『窓』が好きですよね?!
リビングには横にも縦にも大きな窓で大開口!!戸建住宅によくある売り文句で「全室二面開口」で〝風通し〟の良さや〝明るさ〟を売りにしたりします。
でも、その『窓』について、2つの面から真面目に考えなければならない事態になってきました。気持ち良いからと言ってたくさん穴を開けると、知らず知らずのうちに自分の首を絞めてしまっていることになっていたのです。
その『窓』が〝穴〟であるというデータの1つが以下の数字!
【 冬 】・・・暖房時の熱が『窓』から流失する割合 58%
(以下、換気15%、外壁15%、床7%、屋根5%)
【 夏 】・・・冷房時(昼)に『窓』から熱が流入する割合 73%
(以下、屋根11%、外壁7%、換気6%、床3%)
あくまで、既存の一般的な住宅での数値ではありますが、部屋を暖める、冷やすために、無駄にエネルギーを消費しまくっているわけです。よく、ザルのように・・・と言いますが、『窓』がザルのようにエネルギーを無駄使いしている温床だとご理解いただけると思います。
2、目の当たりにしている地球温暖化
日本の住宅性能が低いこと、これが地球温暖化の一因と考えるならば、地球温暖化により3月から夏日(25℃以上)を記録し、冷房を使い続ける期間も長期化すれば、さらに地球温暖化につながっていく、負の連鎖になるのです。
日本の住宅だけが悪いわけではありませんが、世界各国ができることを1つ1つ改善していくことが重要です。その日本ができることの1つとして、住宅性能の向上が挙げられ、2025年の建築基準法の改正に繋がっているのです。
地球温暖化が自分たちの首を絞めていることの1つに〝火災保険料〟があります。現在、〝火災保険料〟が爆上がり中ですが、これは地球温暖化により自然災害が頻発し、支払保険料の増加により、今後も上がり続けるフェーズとなっています。
この原因が『窓』だとは言い切りませんが、「日本の住宅性能が低い」⇒「日本の窓の性能が低い」⇒「エネルギー消費が多くなる」⇒「地球温暖化」⇒「自然災害の増加」⇒「火災保険料の高騰」と無関係ではないのです。
日本のエネルギー消費の約3割が建築物分野であり、そのロスが一番大きい場所が『窓』だということを認識しておく必要があるでしょう。
3、物価高騰
現在の日本は、フェーズ(局面)で言えば、「物価高騰」「インフレ」になります。食料品から全てのものが値上がりしている中、前記の「火災保険料」もそうですが、『窓』にかかわるものとすれば、「冷暖房費」、「電気代」「ガス代」「灯油代」になります。
「電気代」「ガス代」「灯油代(ガソリン代)」は、年に何回も値上がりしています。でも、冷房を我慢すれば命にかかわる暑さであり、冷房を使い続けざるを得ません。しかも、『窓』からのロスが大きく、「冷暖房費」が私たちの首を絞めつけてきます。この負の連鎖も、『窓』に一因があるのです。
4、住宅の性能を上げる
カーボンニュートラルに向けて建築ができることとして、2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が制定され、それに伴い、建築基準法も改正、2025年4月から施行されます。
これにより、日本も建築分野における〝省エネ促進〟や〝環境負荷の軽減〟に本腰を入れることになります。
【 今回の建築基準法改正から見られる本気度ポイント 】
- 1,新しい省エネ基準では、断熱等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上が義務化され、全体としてエネルギー消費が約20~40%削減されることが見込まれている。
- 2,次の2030年基準(予定)では、2025年基準に比べて約20~30%削減が予想されている。
- 3,4号特例の縮小は、構造規定や省エネ基準の適合性が審査される対象が狭まるだけではなく、太陽光発電などの省エネ設備を設置することで建物の重量化は避けられないため、より構造安全性の基準をチェックするためでもある。
- 4,屋根や外壁、階段や間取りなどの構造や外観に関わる部分を半分以上変更する大規模改修(リフォーム・リノベーション)でも確認申請が必要になる(既存建物に対する本気度?)。
逆に、懸念点もいくつかあります。
- 1,4号特例の縮小により、建築確認が下りるまでの期間が長くなり、コストもかかる(10~30万円程度)。
- 2,新しい省エネ基準を満たすためには、建築費がアップする(100~150万円程度とも、坪10万円以上とも)。
- 3,そもそも建築費が高騰している(5年で1.4倍程度)。
- 4,住宅ローン金利も上昇している。
建物の性能を上げればコストアップすることは想定していたでしょうが、ここまで建築費が高騰すること、その他の物価も上昇していること、金利も上がっていること、これらがどこまで想定されていたのでしょうか。
この幾重にも積み重なるコストアップで、カーボンニュートラル達成へのスピード感がどうなのか、心配になるところです。
私たちは、ただオシャレだからとか、ロケーションがいいからとか、風通しのためとかで安易に『窓』を設置するべきではないということです。自然の風を取り入れて、エアコンをなるべく使わない生活をするなら別ですが、ほぼほぼエアコンを点けっ放しが前提なら、エアコンを効きやすくするために『窓』の数を減らすべきでしょう。今なら建築コストの削減にもなります。そして、『窓』を設置する場合、性能の良い『窓』を選択することが必要になってきますね。